
杜の都“仙台”の地元オーケストラとして全国各地で活躍を続ける、仙台フィルハーモニー管弦楽団・打楽器奏者の三上恭伸先生、三科清治先生、佐々木祥先生に “打楽器のいい音づくり”をテーマに語っていただき、”もっとも重要な3つのポイント”について、アドバイスをいただきました。



大阪府出身
京都市立芸術大学卒
岩手県宮古市出身
東京芸術大学卒
北海道北見市 出身
東京音楽大学卒
佐々木 祥 先生
三科 清治 先生
三上 恭伸 先生
● いい音を出すためのポイント@
「確かな楽器を選ぶ」

☆打楽器のいい音とは、どのような音でしょうか?
三科:いい音とは何かっていうのは、紙に書けるものでないので、打楽器のいい音といっても実は判断が難しいし、管楽器のように簡単には伝えにくいものなんですよ。私の考えでは、プロでも身近な先輩でもいいのですが、演奏を聴いたときに背筋が「ゾクッ」としたり、胸に「グッ!」ときた音なんだと思います。そういう音って一生心に残りますしね。だからこそ、この答えを求めるために、プロのコンサートに足を運んで欲しいし、もしそれが無理だったらCDでもテレビでもいいので、いい音楽をどんどん聴いて欲しいと思います。
☆いい音を出すためには、どうしたらいいのでしょうか?。
三科:まず何よりも“上質なサウンドと高いポテンシャル”を兼ね備えた、信頼できる楽器を手に入れることですね。楽器を選ぶ時は、楽器の特徴やクオリティなどを十分に理解したうえで、いかにバンドや自分に合った楽器を見つけるか、ということが大切です。材質による音の違い、機能的な特徴、サイズ・・・。いろいろあるなかで、”確かな楽器” を選ぶことが、大前提ですね。
● 良い音を出すためのポイントA
「楽器のメンテナンスとチューニングを正しく行なう」
三上:ある学校との合同演奏会での出来事でしたが、せっかく高価なスネアドラムを持っているのに、ヘッドがゆるんでいたので、普通のテンションになるようにチューニングをしてあげたら、生徒さんがゆるんだヘッドでのロール奏法にすっかり慣れてしまっていて、正しいチューニングをした時には、逆にロールができなくなってしまったということがありましたね(苦笑)。これは日頃からチューニングをちゃんとせずに、練習や演奏をしているからなんですね。生徒さん自身が正しいチューニングやメンテナンス方法を知らないということが問題だと思います。特に、チューニングについては、買った当時のままということもありますから。
佐々木:確かに、チューニングができないというか、スネアドラムのボルト一つ外したことがないという生徒さんは多いですね。せっかく高級ないい楽器を買っても、メンテナンスができなければ、楽器本来が持つ音の良さを生かすことができないんですよ。一番問題なのは、楽器を購入後、顧問の先生も生徒さんも楽器を壊しそうだからと怖がってしまい、触ろうとしないということなんです。
三科:自分たちが教えに行くと、楽器のメンテナンスだけで時間が半分も取られてしまうことがよくあります。でも、それをやらなければ、いくら技術面を指導しても、いい演奏やいい音とは何か、ということを伝えることができません。ですから、講習会では必ず、メンテナンスとチューニングを最初に教えています。奏法の技術を少しずつ教えるよりも明らかに音が変わるし、しかも早いですね。練習で基礎打ちができるようになっても、チューニングがうまくできていない場合や楽器のコンディションが整っていないと、ちゃんとした音が出せないんです。打楽器だからこそ、普段からそういうところにもっと時間をかけて勉強して欲しいですね。
☆ティンパニのメンテナンスはどうしたらいいのでしょうか?

三科:僕たちも昔から伝えてきたことなのですが、ティンパニは、ヘッドの管理がとっても大事ですね。実際、いつ張り替えたヘッドなのかわからないということが多いので、ヘッド交換の時には、小さくていいので、張り替えた日がわかるように、ヘッドのリムなどの見えるところにマジックで日付を書いてください。ただ、油性ペンじゃないとダメですよ。水性だと消えてしまうから(笑)。
佐々木:ホント、こういう何気ないことが意外と大切だったりするんですよね〜。
三上:ティンパニのヘッド交換は、最低でも2年に1回、できれば年1回はして欲しいですね。ヘッドのチェックも楽器のメンテナンスという意味では非常に重要なことなんです。ヘッドがダメになってしまったら、いい音は出せませんので。折れたマレットでヘッドを叩いたりしませんよね。それと同じことなんです。
☆コンサートバスドラムの場合は?

三上:コンクールだけを基準に考えて、いい音を求めてバスドラムに本皮を張っても、湿度や気温の管理までできなければ全く無意味だと思っています。実際、リハーサルができないコンクールで、ステージの環境や状況に合わせてチューニングをすることは、よほどの技術や経験がなければ、限られた時間の中ではとてもできないからです。顧問の先生や生徒さんに、ストレスを感じながら演奏して欲しくないですしね。
三科:ホントそうですね。いい音が鳴るとわかっていても、その知識や経験がなければコントロールすることができないし、いい楽器を使っているという自己満足で終わってしまいます。コンクールではなおさら調整のしやすい楽器選びが大事だと思います。無理して本皮を使うよりも、レモのニュースキンヘッドを使った方がよっぽど良い結果が出ると思いますけどね。(笑)
☆では、スネアドラムは?

三科:スネアドラムも、年に一度はティンパニと同じようにヘッド交換をして欲しいですね。スネアドラムの場合は、チューニングの仕方を練習することで、今よりもっといい音に変わるキッカケになると思います。演奏技術を上げる基礎練習ももちろん大切なのですが、机や練習台を叩いていても“音は変わらない”ので、ぜひ一度、スネアドラムのヘッドを外してチューニングをしてみてください。今までやらなかったことを始めることが、音づくりの出発点になると思います。
佐々木:とにかく、手始めに、自分たちの楽器を怖がらないで触れてみることが大事ですね。演奏技術は日々の練習で少しずつ良くなることがあっても、音色は普段から意識的に取り組まなくては、何も変わらないので。
● いい音を出すためのポイントB
「自分に合ったいいスティックとマレットを選ぶ」

三科:いい音を出すためには、楽器を生かすためのマレットを吟味することも非常に大切ですね。手の大きさや指の長さは人それぞれ違うので、自分に合ったものを1セットだけでもいいので、ぜひ買ってみてください。自分のスティックやマレットだからこそ、練習や演奏に対する想い入れがきっと変わってくるはずです。
三上:いい楽器はそろっているのに、マレットやスティックがボロボロなバンドをよく見かけます。ホントもったいないかぎりです。
佐々木:コンサート会場などによっては、チューニングだけではうまくいかない時もあります。そんな時は、手持ちのいくつかのマレットで音を調整することもあるので、マレットは重要なんです。
三上:スティックを選ぶ時ですが、軽過ぎず重過ぎずといったところを選んで欲しいですね。細くて軽いスティックは、色付きのボーリングの玉のように、安定性がなくなるんです。
三科:音に輪郭を出すためには、やはりスティックにある程度の重さは必要ですね。個人的には、スティックの太さは15oから16oの間がベストだと思っています。特にこれから打楽器を始める方には、パールの106H、ヴィック・ファースの“SD-1”、“SD-9”がおすすめですね。
☆ どんな練習をしたらいいでしょうか?
佐々木:打楽器の基礎練習というのは、自分が今やっているこの練習が、何の楽器(曲)を演奏するためにやっているのか、いつも頭の中でイメージすることが大切なんです。それを踏まえながら、例えば練習台を使って練習をする場合、10回叩くなら10通りの音を出そうとか、同じ音の大きさにそろえるとか。単なるバチ打ちの基礎練習ではなくて、工夫することが大事ですね。
三科:私自身いろんな練習台を持っていますけど、パールで最近出した電子練習パッド(ビートニック)なんて、ゲーム感覚で楽しくやれていいんじゃないでしょうか。打楽器パート全員でやるバチ打ちの基礎練習も、コミュニケーションという意味では大切ですが、案外無意識でやってる場合もあるから、注意しなくてはならないですね。練習はそれぞれのレベルや課題がきっとあるはずだから、一人で行なって自分自身をチェックすることも大事なんです。工夫して練習することで、自分のタイム感やリズム感を養って欲しいですね。


☆練習の上手下手というのはありますか?
三科:練習のうまい学校というのは、自信があるっていうことでしょうね。学校の伝統や実績、先生や先輩への信頼があるから、この練習は絶対に間違いはないというようなモチベーションを持っていますね。練習を好きになるように、いろいろ工夫をしていると思います。もし、そのような環境がなければ、今はインターネットなどで練習方法の情報を簡単に調べることができるし、うまくなりたいなら自分自身で情報を探さなくてはいけないですね。それは、いい音を出すことにもつながっていますよ。
佐々木:自分の出来ることだけを毎日練習している人が意外に多いんですよね。それは練習というより、今出来ることの確認作業やウォーミングアップみたいなものなので、練習に大切なのは、あえて自分の出来ないことをやることに意味があるんです。これは、パートのみんなで一緒にやる基礎練習やアンサンブル練習にも言えることなので、出来ることだけを単に毎日繰り返していた練習は止めにして、今日からは出来ないことに、どんどんチャレンジするような練習を是非、頑張ってみてください。
本日はありがとうございました
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