音楽を彩るシンバルサウンド
back▲
セイビアン・シンバル特集 “石内聡明先生インタビュー”

シンバルは見た目にシンプルな楽器でも、実はとても奥の深い、重要な役割をもっています。そこで、セイビアンシンバルを愛用する読売日本交響楽団首席打楽器奏者の石内聡明先生に、オーケストラ、吹奏楽におけるシンバルの役割、奏法、選び方などを伺いました、打楽器とはこんなにもすばらしいものかと興味をそそられるインタビューですので、ぜひご覧下さい。



さっそくですが、普段の演奏、練習の中でシンバルを演奏する時など、生徒さんには様々な悩みがあると思いますが実際に現場に立ち会う場面で、学生やプレイヤーからの疑問、質問、悩みなど耳にすることが多いと思いますが、まずはそちらからいくつかをご紹介、教えていただけますか?


雑誌の記事を書いたり、その応答をしたり、コンクール審査員を務めたときに必ず聞かれるのがこの3点ですね
●打ち方、基本奏法を教えて欲しい
●シンバルの選び方
●合わせシンバルの一番小さい音、ピアニシモを出す方法
ピアニシモについては、シンバルで苦労するポイントの一つで、ものすごく難しいんですよ。我々でも神経を使いますけど、これはよく聞かれますね。


あと、実際の生徒さんや他のプレイヤーさんのシンバルを演奏する場面を見られることが多いと思いますが、特にコンクールの審査員をされている場合などで、奏者が一生懸命演奏はしているんだけれどわずかな思い違いとか錯覚があって、もったいないなあと思われる事例があれば、あえてですが、挙げていただけますか?


合わせシンバルという楽器は単独で使う場面ももちろんありますが、例えば吹奏楽というバンドの場面では大太鼓と対になって大太鼓が「ドーン」そしてシンバルが「ジャーン」とミックスされて全体で新しい音、響きとしてオーケストレーションの中で「ザァーン」という、響きを作ることが実際には多いですよね。
ですから、大太鼓があって、その近く、隣ぐらいに合わせシンバルがあると非常に良いんですが、現場では大太鼓があっち、合わせシンバルがこっち、みたいに置かれて、サウンドも分散してしまうケースが見られます。
それも人数に限りがあるので掛け持ちとか持ち替えとかいろんな事情があることはわかりますが、基本的に大太鼓とシンバルは隣同士になって一人前、本来の姿になるということも多々ありますので、もっと配置について出来るだけ気を配れれば、と思うことがあります。あと勘違いということではないんですが、それと
イメージ”を持っていないシンバルサウンドが出てくると聴いていてつらいですね。
例えば静かな場面でただ漫然と「ジャァン」と出してみたり、逆に大きな音の場面で「
シャン」と軽くやってしまったりと、シンバルというものは一体何のために音符が書かれているのかをまずは知って理解して、仮にシンバルで4分音符、ということだったら、その4分音符にどういう想いを込めて演奏するかということが必要なんですね。
金属楽器(シンバル等)というものはオーケストラ、吹奏楽の中では”
色ものなのでやっぱり、色彩感が出せないとまずいですよね。ですが実際にはそのあたりが乏しい場合が多いと感じて、気になってしまう、ということがありますよね。


その“シンバルサウンドにイメージを持つ“ということに対して、それが、ああそういうことなのか、と直感的に判るようになるための具体的な方法というものはありますか?


楽曲には音の横の流れ(メロディ)と響きの厚み(タテに積み重なる感覚)というものがあり、そこにどうやってうまく入っていくか?というのがまず1つ。そして色彩感とか和声感を感じる意識を持つことですね。
つまり入り方と音の創り方の2つ。そこでメロディラインでどういう色が欲しいのか、厚い「グゥワァン」とした太い音なのか、「フワーッ」とした優しい音なのか、それをまず自分で気付くことが大事です。
気付いてはじめて、それに見合ったシンバル、奏法、マレットというものが出てくるんです。非常に深い話になるんですけれど、どのように、どう音を作るかっていうことが勝負ですね。
これは若い人にとっては難しいことですね。もうひとつ、我々は演奏の際に和声を感じます。例えば和声の動きでいうと、ドミソの和音、次はドファラ、次にシレソ、そしてまたドミソで完結、これで3種類の音がありますね。
私はこういう時に、すべて打ち方を変えます。それで音を落ち着かせたり、華やかにしたりしますよね。そうしないと、和声的に溶け込む音が作れないものですから、ちゃんと自分で和声を考えながら音を出すということが非常に重要だと思いますね。中高生には難しいかもしれませんけどね。



あと実際に今、いろんな奏法で音が使い分けられるっていうことだったんですけれど、シンバルには音の要素、アタック、トーン、サステイン、があると思いますが、そのあたりをそれぞれ、または全体としてどのように奏法上、意識していけばいいんでしょうか。


これも、色彩感をはじめとする“イメージ”にまつわることなんですね。例えば、合わせシンバルの場合、メロディラインのフレーズによる予動をとれば、まずは半分はOK。大きなフレーズには大幅な予動を、細かい動きには小幅な予動を。ただ単純に小節内の何拍目に打つといったイメージではなく、そのメロディのテンポやフレーズにあった、音の出し方があるということですね。
予動で決まる!!
では、その音はどういう音にしなくちゃいけないかというときに、明るい音でしたら、アタックをサッと出すための技術が必要です。明るい音を作るには、私はアタックをしっかり、実は2発当ててるんです。
あったかい音なら、その接点、つまり左右のシンバルがさわっている時の音の長さを調整する、シャーンなのかスッなのかズーンなのか、それによって音の厚みとか深みとかを使い分けられるんです



ここで石内先生には、シンバルを実際に演奏してもらうことになったが、合わせシンバルとサスペンドシンバルのそれぞれに、高度な技術を駆使した音色づくりの秘密があることがわかる。そして、技術だけではなく、鋭い感性と音楽全体を充分に把握する音楽性が求められることも当然だろう。



この時のシンバル演奏の模様は、より判り易く理解していただくため、上記の動画をご覧ください。






サスペンドシンバルも1枚だけではなくて、サイズも変えてしまって
2枚とか3枚とかセットアップされることもあるんですよね。またその場合はキャラクターがかなり違うものを選ばれますか?


最低2種類のサイズは欲しいところですね、どういうバンドでも。・・できれば良いものが欲しいですね。我々のクラシックに使うシンバルの場合は、いいものを追求していくと音のキャラクターやシリーズなど、結局は同じようなものを求めてしまいます。
まあ、ポップス的な方は、逆にいろいろ役割が違いますので、リズムを刻むとか、パワーを出すとか、それはキャラクターが変わるので、それはそれで選んでいいかと思いますけど、我々クラッシックの吹奏楽、オーケストラでは、何枚か選んでいっても、やはり同じシリーズのものを使用してしまいますね。



ちょっと話が変わりまして、シンバルの情報というとたくさんあると思うんですけど、情報をどうやって自分のものにインプットしていくか、また一方で、他の多くの方にそういった情報を伝えていくことも多いと思いますが、そんな中でまた逆に得られたことというのはありますか?


情報はもう、パールさんがやっているこの情報誌だとか、プリントものなどを見て、知ることがありますね。それから映像とかで見て、ああ、この人あの楽器使っているなあ、とか、あの場面でこういう楽器か、とか、ああいう使いかたがあったのか、という発見がありますし、そういうことで、結構情報を得ますね。
あと
CDかなんか聞いて、あ、これは、あのメーカーだなとの違いなども判りますし。あと、教えていて、教わったことっていうのは、逆にいって、こういうシンバルは彼が叩くとこういう音がするんだという、人間が持ったら変わるなと、これシンバルは生き物なんだなと思うことはありますね。
僕らはああいう音出せないのに、彼は出せるんだな、そういう時はありますね。そんな時は、逆に、負けず嫌いな私としては、よし、私もあの音を出そうと、そういう気持ちになりますね。こどもっぽい話(笑)で恐縮ですが。



ところで、我々のほうで扱っているものが、カナダで作られるセイビアンというシンバルなんですけど。読響さんでもこちらを使われているとお聞きしていますが、最近の特徴として非常にラインナップが増えています、セイビアンに対してざっくり、持たれているイメージとか、他社とくらべてユニークだと思われるところを教えていただけますか?


ああ、ありますよ。セイビアンはいろんな音楽に対応できます。それは器用貧乏ではなく。他のメーカーと比べてコクを持った、いろんな応え方をしてくれますね。いろんな場面で、もちろんプロフェッショナルが持った場合ですが、いろんな場面で求める音を出せます。この場面ではいいけど、こちらじゃちょっと、というシンバルが多い中で、セイビアンはそのあたり幅があると思います。それを僕は感じています。
だから非常にありがたい楽器です。奏者のイメージをもっともっと膨らませてくれんです。あっ、こんな音が出たっという奏者の発見があって、それがさらに次のステップに進ませてくれるような楽器だと思います。ちょっと褒めちぎっていますけど(笑)僕の印象はそうですね。
16でも18“でも20”でも。私は20“を多用しますけど。
あと腰が強いので、厚みというか、叩いている感触なんですけど。「ザッ!」という感触が、薄かったらだめで、厚すぎてもダメで。いい意味でクッションになって、その弾力が音になっている。これは叩いていると判るんです。ああ、応えてくれている、という実感ですね。それで僕も気に入ってますね。
シンバルはそもそも育てる楽器なので、最初、まだ硬いなと感じたら、「よしっ、4年かけて育てよう」と思って育てるんです。だんだん鳴って来ますからね。今ピークの楽器はむしろ除々に落ちてきますから、シンバルを選ぶときは、これから鳴りそうな楽器を見つけることですね。うちの読響にもやっぱり今育てている楽器がありますよ。



いいシンバルと出会う秘訣はありますか?


これはシンバルが来ないことには判らないわけで・・・待つしかないんですけど。シンバルというのは個性が多くて特に合わせシンバルの場合は2枚の相性があって、なかなか見つからないですね。
これが見つかった場合は本当にうれしいですね。あとサスペンディッドシンバルでも音がまとまっていると、叩いた時、ジーンと同じ音色がそのまま続くものがいいですからそういう楽器を見つけるのが難しいですよね。音色がまとまらずに余韻の乱れているのもかなりありますしね。
もちろん同じメーカー同じインチでもそれはあります。これはいい、という、そういう楽器と出会うことはなかなかないですね。完璧なシンバルというのは人生の中でも2,3組しかなかったりします。



シンバルは例えば学校備品で、よく使われていますが、ずっと使い続けられる楽器というわけではなく、こうなってしまうとシンバルは割れているんではないけれど、よくないといういわゆる寿命や消耗したという目安はありますか?


まずはシンバルには“シャーン!”、“ツィーン!”という高い余韻があるんですが、それが乏しくなってきた時、またはその余韻が短くなってきた時ですね。これは遠くからしか判らないので、会場のステージで鳴らして、遠くで誰かに聞いてもらう。
それで叩いた本人が「シャーン」と鳴らしたつもりでも、客席では「シャッ」としか聞こえなくなったら、それはもう寿命です。なので高い音の成分がなくなったら、もうおいとまを、という感じですね。楽器ももう「私だめです」と言っている感じしますね。
そうなったら交換するとかになりますね。



なかなか難しいですね、鍛えながら、いい状態も味わって、最後、寿命を見極めるという。


はい、理想は、同じものを複数持ってそれらを用途で使い分けることですね。よく同じ靴を複数持っていて交代で履くと長持ちする、ということがありますが、それと同じですね。


サイズと厚みのバランスに関してはどうでしょうか?


私は個人的に、20は厚いタイプが好きで、18もどちらかというと厚いほうがいいんです。
薄いシンバルは早めに、年を取りますから、音がやせてきます。腰が弱くなってくるので、どちらかというと厚めのものを買っておいた方がいいでしょう。これはプロの人が見ないと判らないところでしょうけど、厚いシンバルは最初は「シャーン」とは鳴らずに、「グワーン」と鳴ります。
それが
3年4年と使っていくうちに、次第に鳴っていくのです。やや厚めのものを手に入れて育てていく、という感覚が必要かもしれませんね。すぐ使いたいということであれば、薄めの良いものもありますが、シンバルは長い期間にわたって使うものなので、鍛えて愛着を持って使うというのがおすすめですね。


あと、シンバルに色々な種類があるとおもいますが、例えば、シンバルの種類によって演奏の仕方が変わってくるということは実際、あるんでしょうか?


メーカーによって音の質は違いますね。たしかに、各社。ただ個性はあります、で我々はそのシンバルが持っている個性を、私達はまず知ることが重要なんです。この楽器はこういう音がする、この場面で使えるなとインプットします。この楽器はこの場面でいいなと、そういう風にまずは分けますね。
そのなかからもっとさらに深くして奏法はああしようこうしようと。そういうような対峙の仕方になりますかね。メーカーで分けるっていうよりも、まあ大体想像はつきます。このメーカーこういう音はするんだろうなっていう。
その中でもこれはこう、これはこうって分類しますね。インチ数であったり厚さであったり、少しずつ試行錯誤して、この場面ではこれだ、とかそういう風に聞いていきますね。



シンバルのサウンドとかプレイとか、先程のように人によって音の出方が変わってくる、ということもあったりするとのことですが、シンバルの奏法上、楽器選択の中で、個性とかオリジナリティというものをどのように追求していけばいいのか


それぞれ打楽器奏者というのはそれぞれが自分のスタイルを持っていると思うんですね。
そのスタイルというのは自分の感性から生まれているものだと思うので、その感性がどういう音を作ろうか、という方向性をその場面の中で、まず設定するわけですね
フランス音楽といったらこう、ドイツ音楽だったら、北欧、アメリカだったら・・・という風に、いろいろな引き出しから出してくるんですけども、その中で自分の奏法で築きあげたもので、そういった場面を表現していく。そういった音質、音色感が出せる奏者に僕はなりたいと思いますし、それが幅があればあるほどに、すばらしい広い音楽が出来るわけなので、場面場面でその奏法をどんどん日夜磨いていくということですかね。
もちろんお客さんにはごく自然に聴こえればベスト、聞いている人には判らないぐらいの差のデリケートな作業を演奏上常にしていますが、結果、これ違ったなとか今度はこうしようとか、そういうのはありますね。



ちょっとこれは聞きづらいところなんですけど、いままで長くプレイをされてきた中で、ちょっと自分の狙いと違ったなとか、いわゆる、失敗というものはありますか?


僕は残念ながら本番では無いんです(笑)練習の時、研究の段階では、いろいろやりますから、これじゃいけないなというのはもちろんあるんですが。これは聞いた話で、僕じゃありませんが、ドヴォルザークの「新世界」、シンフォニーですね。
シンバルが4楽章に1発しか出てきません。あるときに4楽章だけ取り上げた演奏会があって、
1発叩くために居た方がですね、叩かないで、演奏に聞き惚れちゃって、きれいな音楽だなあ、きれいだなと思いながら、でもなんか無いな、気付いたら、あっ自分のシンバル1発無かった、落っこった。どうしよう、これじゃまずい、演奏料、ギャランティーもらって帰るには忍びないんで、全く別の所でどっかで1発音出しちゃえと、ちょっと立って、ちょっと音だしてスッと座ってしまったっていう人もいます。
・・名前は言えません。〈笑〉


それからあと、シンバルの手皮がありますね。これが叩いた瞬間に、結び目がゆるんでシンバルがストーンと飛んで、ステージの前のお客さんの方へ飛んでいったことがあります。これは凶器になりますからねえ、そんな奏者もいました。あと、サスペンディッドシンバルはスタンドが華奢ですと、叩いた瞬間に倒れちゃうんですね。
或る時、フォルテシモの場面で、それも曲の一番終わりに叩いてジャンと止めないといけない所で、シンバルが揺れて止まらずに、そして倒れちゃったんです。東京文化会館でした。そのまま倒れて、うわっ曲が全部台無しにっ!、ていうところでサバッと着地・・。
えっどうしたんだろうと思ったら、ちょうど床の木と木の梁、すきまにスポン!とはまって奇跡的に音が出なかった。それは僕のとなりの人がやってました。(笑)
あと、あるオーケストラでこういう場面にも遭遇=シンバル叩いていて、おちょこになっちゃう古〜いシンバル・・。まあいろいろありますね。



取り返しが付かない。


そうなんですね。どうしようもない。私は幸いなことにありません。


上達する過程、試行錯誤の中で、ちょっと普通の人があまりやらないなとかいう、感覚的なこと、あるいは身体の使い方とか、トレーニング法があれば教えていただけますか?




これは僕の財産だと思っているんですけど、ある先輩から特にトライアングルで教わったことがきっかけで・・・、それは2枚の合わせシンバルが当る瞬間に、その接点がどのようになっているのか?っていうことなんです。
実は、それが音色を作るキーポイントだということに私も気づいていまして、その接点をいかに
100分の1秒か1000分の1秒のタイミングでこなすかによって、音にどう影響するか?どのような音創りができるか?ということにこだわるのです。
私はシャープな音、暗いダークな音などを、どのような奏法で創ることができるかを、日々研究しています。あとは、それの基本となる、イメージ創りに関してですが、例えば僕は絵が好きだし、本も読みますし、風景も見たりします。例えば、絵を見た時に景色、静物、人物画などいろいろあるのですが、この色だったらこの音を出したいなとか、大太鼓だったらこの色を出したいな、とかね。あるいは、この絵をみたらトライアングルだったらどんな色?、シンバルだったらこんな音?というように、イメージをたくさん蓄えるために絵を見にいったりしますし、絵から教わることがありますね。


打楽器では本当にいろんな事ができますけど、吹奏楽、オーケストラの打楽器の本当の真髄は隠し味である、ということに興味を持っていまして、それも、あるフランスの画家《ユトリロ》の絵から教わったことなのです。
あるパリのモンマルトルの街の絵があるんです。ただ建物が、アパートメントがずーっと建っていて、道が続いていて、1点消失法で書いてある。雪がちょっと降ってるかのような午後か夕方なんですけど、まだまだ光がある。ただし全体がグレーの中で、傘を持って歩いて帰ろうとする3人ぐらいの女性と男性が後姿でいて、要は色自体が本当にすべてグレーで、寒々しい世界なんです。立ち込めた雲とか、雪が降ってそうで。
ところがそれはとても暖かい絵なんです。なんで暖かいんだろう。おかしいな?と近づいて30〜40分見ていて、ああこれだ、と思ったことが・・・、本当にブルーグレーの世界なんですけど、3つほど、だいだい色、深い橙色がアパートメントの煙突の屋根に、ちょっ、ちょっ、と見えないぐらい、それも油絵ですから、もう色があせているんですね、その色が暖かみを及ぼしているんだなあと、こちらから見てもわからない、でも暖かい。よーく見て、ああこれだあ、という発見があったんですね。その時、これが打楽器の色付けの真髄かなあと思ったんです。
もちろん派手なところはあります。おいしいところはありますけど。ではなくて、打楽器奏者として感性を具音化したり、いろんなことをやらなきゃいけない時に、繊細なところでのそういった音創りとは、どういったものか。お客さんにははっきり聞こえないけれども、なにか音色が変わった、という場面、これが打楽器だなと思って。これを踏まえて、よく僕の感性がシンバルに対して私にああしろ、こうしろと要求してきますね。ここは出過ぎてるよ、とか、ここはシンバルは隠し味だよ、とか、常にやってますね。細かいかもしれないですけど、そういうことにこだわり続けていきたいですよね。



最後になりますが、特にシンバルを演奏していて、すごく幸せな、至福の瞬間というのは具体的にはどんな場面ですか?


やはり一番トップで、エベレストの頂上に立ったぐらいの喜びで、一番おいしいところを私一人が取った、というところですよね。要するにオーケストラのみなさんが長い時間、何時間かけて築き上げますね、こう音楽的に波があって、上がったり、下がったり、そうして壮大な山を作ってその頂点にシンバルがあるような曲がありますよね。
マーラーでもあります、ブルックナーでも、ラベルでもあります。その時にいちばんおいしいところで叩ける、この魅力ですね。これが最高の魅力ですね。おいしいところを持っていきまして、申し訳ありません(笑)的な。その分その場面に至るまで待たされる訳ですけど、こっちがね。
でもそうやって1発の強み、効果が本当に思ったような表現が出来た場合には、これは本当に至福の喜びです。
1発でオーケストラの色を全部作ってしまったというような、これはシンバルやっていて最高の喜びですね。で、僕のスタートが、実はそこから入ったんです。僕が打楽器奏者としてこれはおもしろい世界だなと思ったのは、小学校4年の時ですけどチャイコスキーの「悲愴」という曲がテレビで流れてましてね。でその時、ヤンソンスっていう指揮者がいまして、その人がロシアのオーケストラを指揮しているのがテレビで流れていまして、それでぼくは当時小学校4年生でクラシック音楽がもういやでいやで、音楽がかかったら1分か2分で寝てしまっている状況だったんですね。
ところがある時、うちの兄が好きでよく見てたんです。その時兄が6年生、私が4年生。その時なにかしながらも、どこかでテレビの鳴っている音は聞いてたんでしょうね。突然、目の前が「グワッ」と黄金色に明るくなった瞬間がありました。なにが起こったんだろうって。すると画面で赤ら顔のおじさんがアップになっててシンバルをやってるんですね。
ああこの音だ、と思ってこれってすごい!と。まあ子供の頃ですから専門的なことは判らないにしても、この音で変わっちゃったんだなあと、ということで、いい意味でショッキングで、それから、人生ですからいろいろ右往左往しましたけど、あのシンバルの音は忘れられないなというなんです。
本当に一発で最大限の効果が出せてしまった、っていうことですよね。もう一言で政治を変えちゃった(笑)みたいな。そんなショックがあった。それが僕の発端なんですね。それから打楽器を志した。なので、至福の喜びというのはそこからスタートしたものですね。特別な想いがありますね。ただ一方ではこれは危険ですよね。
ポイント、音色、バランス、間違えたら全てゼロになります。みんなが80人から100人のオーケストラが築きあげた音楽が一発で無くなりますから。こんなシビアなものはありません。命懸けです。これだけは申し上げておきます。


back▲


きっかけは、あるフランス画家の絵なんです。

インタビュー“オーケストラ・プレイヤーに訊く”

「音楽を彩るシンバルサウンド」


石内聡明先生 

読売日本交響楽団 首席打楽器奏者

東邦音楽大学・短期大学 特任教授
東京藝術大学音楽学部器楽科卒業



< 動画ファイルをご覧頂くにあたって>
データはWindows Media Plyer形式(拡張子.WMV)です。 ADSL等の高速回線でご覧下さい。
Windows Media Plyer
がインストールされていない場合は下記をクリックしてダウンロード後インストールして下さい。