このセイビアンシンバル特集では、今年度の吹奏楽コンクール課題曲Tを作曲した “内藤淳一先生”にインタビューし、作曲家から見たシンバルについての考えや打楽器全般についてお聞きしました。プレイヤーの目線とは異なる興味深い内容ですので、ぜひご覧下さい!(全4回配信)
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これまで、数々の作品が吹奏楽コンクールの課題曲としてとりあげられている内藤淳一先生は、シンバルといえばサスベンド(Suspended) シンバルをよく使うというイメージがあるようで、それは子供の頃、初めてマーチを聴いて感動を覚えた時の印象が深く心に刻まれているからだという。今年も得意のマーチを課題曲として作曲した内藤先生に、お話をうかがってみよう。
■ところで、現在、多種多様なシンバルが世に出ている中で、特定のサウンドをイメージして曲の中にシンバルのサウンドを配置しているのですか?
「栄光をたたえて」では少し違うんですけど、今回の「ブライアンの休日」では非常にアップテンポの駆け足マーチのようなものなので、シンバルの音色からいうと、オーソドックスなマーチでよく使われる低い音や複雑な倍音成分の多いクラシカルで重厚なものはあまりイメージしていないんです。深みのある音ではなくて、すごく明るくさわやかに高いほうがサーッと伸びていくよう感じですね。
この曲に合うイメージとしては、小学校とか中学校の運動会ですね。ルロイ・アンダーソンの「トランペット吹きの休日」。あのパンパンパンパンタカタカタッタッタラララ・・・・ウキウキワクワクした時に「ワアーッ」とか「アッ」っていう時の自分の中から発散するものが、シンバルの音になっている感じです。さらにいうとその前にロールとかをくっつけて「ウウーッ、ワッ」っていう感じにしたい気持ちもあるぐらいです。青い空に万国旗がいっぱいあって、雲が浮かんでいて、運動会で走っている子供とかそれを見ている人達の歓声が「ワーッ」とあって。だからシンバルはまさに「ワーッ」という歓声だと思いますね。
■今回はトライアングルも要所で活躍してますね?

これは、迷いましたね。というのは、「マーチ・グリーンフォレスト」でも使ったんですが、トリオのところで、スネアドラムは休ませたかったんです。でも、何かが欲しいんですね。マーチでは特殊な打楽器は使っちゃいけないと私は思っているので、ぎりぎり選択したのが「マーチ・グリーンフォレスト」と同様にトライアングルだったんです。
トライアングルを左手でミュートした時のチという音と、放した時のチーンという音の組み合わせだけ。そこにレガートだけのメロディの世界があるんですけど、バンドのほうではレガートしか出てこないので、そこに点を打っていくようなイメージで、トライアングルをほんのわずかですが、入れたかったんですね。
でもこれ、どうやって演奏するんですか?という質問をよく受けるんです。トライアングルはチリリリと鳴らすだけで、ミュートをかけるっていうのを演奏する生徒たちが知らない場合もあるので、下手するとだらしなくなってしまう。スタッカートをちゃんとやってほしいなと思っているんですけど。
■パーカッションの演奏はけっこう難しいですね?
トライアングルは、ティンパニの奏者にやらせるかスネアの奏者にやらせるか悩んだのですが、別にどちらでなきゃいけないという意味ではなくて、楽譜に書いていない第5、6の奏者がやっても構わないんです。
私は中学生と高校生のバンドをイメージしているのですが、パーカッションをやっている生徒たちには、まずスティック操作の必要な楽器をきちんとやって欲しい。そしてマレットを使う鍵盤打楽器もちゃんとやってほしいと思います。もし両方やることが無理ならば、ある人はスネアドラムとバスドラム、またある人はグロッケンやシロフォンなどの鍵盤打楽器をトレモロなども含めてできるように。
あと小物としては、ラテンパーカッションは確かに難しいので、トライアングルとかタンバリンを効果的に使えればいいかなあと思っているんです。いろいろきちんとやろうとすると、ギロひとつとっても、難しいですからね。
■では打楽器プレイヤーに望むことは?
中学生、高校生で吹奏楽に関わっている人たちは、どちらかというと太鼓系が得意な人と鍵盤系が得意な人がいるんです。もちろん両方できる方がいいんですけど、きちんとした正しい奏法を、できれば自己流ではなくて、年に1回か2回の講習会で教えてもらって、習得して欲しいですね。
それで、自分はやっぱり太鼓を極めたいとか、私はマリンバが大好きだから鍵盤系を中心にやりたい、というように。太鼓の中でもスネアドラムとティンパニというのは全然違うので、中高生のパーカッショニストにとっても、ある程度自分の土俵になる楽器を持ってほしいんですよね。高校生になると結構、音大に行くっていう人が出てくるので、まさに太鼓の人は太鼓ですし、マリンバの人はマリンバを選ぶ。学生ぐらいからそうやって除々に、自分が目指すものがパーカッションのなかでも絞られてくるといいんじゃないかと思うんです。楽器でも音楽なんでもそうなんですけど、自分の一番拠り所となるジャンルなどを持たないと、やっぱり続けていけないんですよね。
私も学校の先生になるときに、作曲の勉強は続けなよって先輩や先生から言われましたし、ピアノや声楽やっている人だったら、学校の先生になっても、やる時間は無くなってくるけれども、自分の専門性っていうのは磨いてたほうがいいよって。自分の拠って立つところをきちんとしておくべきだと思います。パーカッションの人だったらパーカッションならなんでもいいっていうんじゃなくて、スネアドラムが好きでしょうがないとか、そういうのがあっていいんじゃないかなと思います。
■最後に、コンクール、課題曲に取り組まれる方に向けてエールがあれば・・
私が最近思っているのは、この課題曲というものが共通の話題になるので、ぜひ、とことん課題曲を楽しんでもらって欲しいですね。何年たっても課題曲っておぼえているんです。作曲した人の名前なんかはともかく、メロディとかタイトルを結構おぼえているんです。「ブライアンの休日」っていえば、仮に課題曲の「天馬の道」を選んだ人にとっても、吹奏楽や課題曲をやった人にとっては、“ブライアン”という名前は記憶のどこかに残っていくので、共通の話題になって、将来はまるで同窓会みたいなものになるんです。
今やっている吹奏楽が将来の仲間作りというか、共通の話題にもなっていくので、今、吹奏楽をとにかくとことん楽しんで欲しいと思うんですよね。まあ、コンクールなので仕方ないところもあるのですが・・・絶対全国大会いきたいとかって。でも、特に中高生の方々には、みんなと同じ曲を演奏して比べられるのでプレッシャーは確かに掛かりますけど、課題曲を楽しむことも大切なこと。演奏し終わって、今は別々のところにいて、お互い知りもしない人たちが、今から5年10年経ったとき、初めて会った人どうしでも共通の話題になるので是非楽しんで欲しい、これがエールですね。これは保証しますよ。課題曲一生懸命やって10年たったときに良かったって。あの時課題曲やってて良かったって。
そういう意味では課題曲のない小編成のバンドの人たちにも、コンクールの場じゃなくていいので、課題曲にどこかで触れてほしいなというのがあるんです。学校の文化祭でもなんでもいいので。私の学校でも中学生は小編成の部に出るので課題曲を演奏しないんですが、このあいだ、地区の吹奏楽祭で他の学校と合同でやりました。あの「ブライアンの休日」を。ぜひ、2008年の曲という旬の音楽を楽しんでほしいと思います!
[ 内藤淳一氏 ]
静岡県出身。宮城教育大学音楽科(作曲専攻)を卒業し、宮城県公立学校の教諭となる。現在宮城県古川黎明中・高等学校に勤務。中高両校の吹奏楽部とコーラス部を指導し、中学校コーラス部の声楽アンサンブルコンテスト全国大会出場や高校の全日本吹奏楽コンクール、全日本合唱コンクールでの東北支部大会出場などの指導実績を残している。また(社)日本作曲科協議会、日本吹奏楽指導者協会、宮城県芸術協会、20世紀の吹奏楽“響宴”などの各会員を務め、作曲分野では3度の朝日作曲賞(吹奏楽)、東北吹奏楽連盟表彰、宮城県芸術選奨新人賞など数々の賞を受けている。
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